Piaレッスルへようこそ!

 今日は団体直営レストランのオープン。団体を代表して二人の選手がオープニングセレモニーに出席することとなった。
「…で、何でオレたちなんですかね、大将。」
「たまたまオフだったからじゃねえか。」
 店に向かうは団体のトップヒール、ガルム小鳥遊とオーガ朝比奈である。
「あんなチャラチャラした店じゃ、オレたち浮いちまいますよ。」
「居酒屋とか焼肉屋なら分かるんだけどなあ。」
 二人の足取りは重い。それもそのはず、そのレストランは従業員の女の子がきわどくも可愛らしい制服で接客するのがウリの店である。おおよそ普段の小鳥遊と朝比奈には縁のない店であった。
「ま、そういう店にはカメラ小僧みたいな連中が集まるからな。虫除けに来たと思えばいいさ。」
 そうこう話しているうちに、店の前に到着する。大々的に飾られた開店記念の花がお祭りムードをさらに高めている。
「チィース。」
「いらっしゃいませー♪」
 開店前だというのに、元気のいい挨拶が二人を出迎える。社員教育は万全のようだ。
「いや、アタシたちは客じゃなくて…って、何やってるんですか!?」

 声の主はメロディ小鳩の母、ギルティ美鷹である。
「お花を届けたついでに、制服を借りてみたの。どう、似合う?」
 唖然とする二人の前で、美鷹は楽しそうにミニスカートをヒラヒラさせる。
「い、いや。似合うって言うか、もうちょっと年…をぉっ!?」
「似合ってますよ、美鷹さん。まだまだ現役でいけるんじゃないですか?」
 小鳥遊が慌てて朝比奈の口を塞ぐ。
「あらあら、お上手ね。」
「ひそひそ(馬鹿っ。余計なコト言って、美鷹さんにシメられてえのか!?)」 
「ひそひそ(す、すまねえ大将。)」
「どうしたの?薫ちゃんも優香ちゃんも何か変よ?」
「こ、こういう店って来ないから、落ち着かなくて。ははっ…。」
「居心地が悪くていけねえや。はは…。」
 笑ってごまかしてみせる。
「だめよ、二人とも今日は主役なんだから。ドンと構えてなくちゃ。っあ、そうそう、二人とも急いで着替えて頂戴。」
 思い出したように、美鷹が二人を店の奥に引っ張る。
「着替え?何スか、それ。聞いてないッスよ?」
「ちゃんと今日のために二人の制服を用意してあるんだから、早く早く。」
「制服?ってまさかアタシたちがアレを着るのか?」
「当たり前でしょ。お店の宣伝なんだから。」
 店内ではすでに従業員の女の子が制服姿で準備している。同性からみても、よくもこれだけの綺麗所を集めたものだと感心する。が、自分が着るとなると話は別だ。
「やだ!オレたちにあんな服似合うもんか!」
「どんな罰ゲームだよ、これ!」
 女子プロレス界屈指のヘビー級二人が暴れるが、美鷹はびくともしない。
「ほら、ワガママ言わない。大丈夫よ、二人とも可愛いんだから、絶対似合うって。」
「いやだーーーー!」
 ずるずると引きずられる二人。

 開店セレモニーは盛大に行われ、制服姿に身を包んだ小鳥遊と朝比奈の開き直ったトークに、詰め掛けたファンと関係者も大ウケであった。

 その夜の興行。小鳥遊と朝比奈のタッグは暴れに暴れたと言う…。

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