深夜、IWWF宿舎にて。
バニー「ふっふふーん、ふっふふーん♪」
上機嫌に鼻歌なんか歌っているバニー。なぜかバニースーツで。
バニー「きょ、お、わー、たの、しい、クリスマス♪」
歌詞までついた。
バニー「さあて、良い子にサンタバニーさんがプレゼントをあげちゃうぞ。」
とある部屋の前に立ち止まると、ノブに手をかける。
とその時、
ガチャ!
バニー「きゃんっ!」
ドアが勝手に開き、驚いた拍子にバニーは尻餅をつく。
バニー「あいたたた…」
???「何やってんだ、サーラ(本名)?」
バニー「見てわかんないの、レミーちゃん。サンタさんよサンタさん。」
レミー「いや、いつもそんな格好だから分かんない。」
部屋の主、レミー=ダダーンがそっけなく答える。
バニー「よく見てよ。サンタっぽく白いふわふわ付けてるし、チョーカーだってもみの葉っぱでしょ。」
むー、と抗議するバニー。
レミー「…で、サンタが何の用だい?」
バニー「良い子のレミーちゃんに、プレゼントを持ってきました。」
レミー「…手ぶらじゃないか。」
バニー「えへへ。プレゼントは、わ・た・し。」
バタン。
バニー「あー!閉めないでよ、レミーちゃん!」
ガチャ。バニーはドアを開けると、部屋に入る。
バニー「もー、無視ツッコミはつらいんだよ。」
レミー「ふざけてるヒマがあったら、さっさと自分の部屋に戻りなさい。」
バニーの悪ふざけには慣れているものの、やはり苛立ちを隠せずにいる。
バニー「レミーちゃんに元気になってもらおうと思ったんだけどなあ…。」
声のトーンが落ちる。
レミー「元気に?」
レミーの問いにうなずくバニー。
バニー「うん。今年はレミーちゃん、いろいろ大変だったから…。」
この年はレミー=ダダーンにとって受難の年であった。IWWFヘビー、北米ヘビー2つのベルトを日本人に奪われ、限界説まで流れ初めているのだ。
バニー「今の私があるのもレミーちゃんのおかげ。だから、レミーちゃんが困った時には力になりたいの。」
一時期、訳あってモデルの仕事を失い、プロレスの門を叩いたバニーの入団をフロントに薦めていたのがレミーであった。
バニー「また来年ベルトを取り返しましょ。私も頑張って強くなるから。」
黙ってバニーの言葉を聞いていたレミーが吹き出す。
レミー「強くなるって、サーラらしくない言葉だな。」
バニー「何よ、人が真面目に話してるのに。」
レミー「ごめんごめん。…そんなに元気なかったかな、私。」
バニー「もうダメかなあって、そんな顔してた。一気に老け込んじゃったみたい。」
ふうっと息を吐くレミー。
レミー「確かに。一気にベルトを取られて弱気になってたみたい。」
拳を握ると、自らの額をごんと叩く。
レミー「まだ終わるわけにはいかないわね。」
瞳に力が戻る。
バニー「そうよ、レミーちゃんは最強のレスラーなんだから。カオスもイチガヤもユキコもみーんなやっつけちゃうんだから!」
バニーに微笑むレミー。
レミー「ありがとう、最高のクリスマスプレゼントだわ。やっぱりサーラは最高のパートナーね。」
バニー「もっちろん!私はレミーちゃんの伴侶だから。」
レミー「いや、それは違う。」
即座に否定。
でも、
レミー「今日は泊まっていくんでしょ?」
バニー「へ?」
レミー「プレゼントはちゃんといただかないとね。」
バニー「レミーちゃん…。」
レミー「“ちゃん”はいらない。」
バニー「それでは、お早めに召し上がってください。レミー。」