クリスマスの夜は明けて

 一夜明けて、IWWF事務所。

社長「何をやってたんだ?レミー。」
 目の前に立つレミー=ダダーンに呆れた口調で問いかけるIWWF社長。
レミー「えーと、なんてゆーか…。」
 返答に困って頭をかくレミー。

 深夜、レミーの部屋から激しい物音と振動が宿舎を揺るがした。ミリア=メアーズはじめ、異変に気付いた選手たちが駆けつけるものの、鍵がかかっている。
ミリア「レミーさん!大丈夫ですか?何かあったんですか?」
 ノックするものの、返事がない。
ミリア「レミーさん!レミーさん!」
 焦るミリアはドアを激しくノックする。
 ガチャリ。
 しばらくしてレミーが部屋のドアを開ける。特に外傷はないようだ。
ミリア「無事だったんですね、レミーさん。」
レミー「ああ、私はな。ただ…。」
 レミーの視線の先には無残にも底の抜けたベッドが転がっていた。

レミー「ベッドが古くなってたみたいで…。」
 ははは、とひきつった笑顔で答えるレミー。
 無視して社長は目線を隣に向ける。
社長「何でお前がここにいるんだ?」
バニー「えーと、なんていうか…。保護者?」
社長「保護者が必要なのはお前の方だろう。」
 騒動のどさくさに紛れてバニーはレミーの部屋から抜け出していた。なので事務所にいる必要はないのだが何故かここにいる。
バニー(レミーちゃん、いいわけヘタだから本当のこと言っちゃいそうだし…。私がフォローしなくちゃね。)
社長「…まあいい。古くなってたとはいえ、寝返りぐらいじゃああまで見事には壊れんだろう。夜中に運動でもしてたのか?」
レミー「運動って…。そんな、コト…。」
 真っ赤になってうろたえるレミー。とても団体のエースの姿とは思えない姿だ。
バニー「そうなんですよ。まさかレミーちゃんあんなに激し…」
 ガスッ!!
バニー「クえッ!」
 レミーのげんこつがバニーの脳天を撃つ。
バニー「いた~い…。レミーちゃん本気でぶったあ~。」
レミー「余計なこと言わない!」
バニー「ふーんだ、元チャンピオンのパンチなんて効かないもんね~。やーい元チャンピオン!」
レミー「元を強調するな~!」
バニー「ベッドじゃ私がチャンピオンだもん。レミーちゃんなんか3分でKOよ!」
レミー「…!だまれ~!」
 どたばたと追いかけっこを始める2人。
 置いてきぼりの社長はふうっとため息をつき、内線の受話器を取る。
社長「…経理か。ベッドの注文を頼む。…ああ、新婚用のとびきり頑丈なダブルを一つな。」

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