お昼の劇場「女豹の蜜」第1回
この物語はダイジェストでお送りします。
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パンサー理沙子とブレード上原はタッグチーム「ハニーバーズ」として、誰もがうらやむ仲であった。
しかし、新女のエース、ドラゴン藤子を理沙子が破ってから運命の歯車が狂い始める。
この試合で藤子に怪我をさせ、引退への引き金を引くこととなった理沙子は、恐怖心からリングで全力を出せなくなっていた。
そんな理沙子の姿を歯がゆく思う上原は、あえて理沙子に反旗を翻し、勝負を挑む。
だが、理沙子の全力を引き出すことなく、上原は敗れてしまう。
理沙子を裏切った罪の意識と己の無力感から、上原は行方をくらます。
残されたのは、上原の真意を知ることなく、裏切られたと言う絶望を抱えた理沙子のみであった。
「…今日子…。どうして…?」
上原を探そうにも、団体のエースである自分が新女を離れるわけにはいかない。しかも、全力ファイトのできない自分では世界のベルトに挑戦することもままならない。理沙子は熟れた身体を持て余すだけであった。
そんな理沙子の前に現れたのが全日本空手王者、吉原泉。吉原は空手こそ最強であると理沙子に挑戦状を叩き付ける。
理沙子と吉原の一線。プロレスの枠を超えた異種格闘技戦に、理沙子は久しぶりに心と身体の熱を感じていた。
勝負に敗れた吉原は、プロレスの奥深さを学ぶべく新女に入団。理沙子の教えの元、関節技、投げ技に精通していく。真摯にプロレスを覚え自分を慕う吉原の姿に、理沙子が心惹かれるのも無理はなかった。
「まっすぐにプロレスに取り組む姿…。似ているわ、今日子に…。」
「理沙子さん…なんて寂しそうな人なの。私はあの人の笑顔が見たい…。」
そして…。
吉原を新たなパートナーとし、理沙子の心は平静さを取り戻したかに見えた。
が、運命はさらに理沙子を弄ぶのである。
「こんばんは、ガルム小鳥遊です。」
突如乱入し、イスで襲い掛かってきたガルム小鳥遊。嵐の乱入者に立ち向かう吉原の姿が、理沙子が意識を失う前に見た最後の光景であった。
理沙子にとって、小鳥遊のファイトは初めて体験するものであった。すべてをなぎ払う荒々しいまでの暴力。激しいラフファイトに晒されながらも、理沙子は身体に熱いものがこみ上げるのをこらえきれずにいた。
「いつまでも自分を捨てた女にこだわって…。女々しいんだよ!」
「今日子を悪く言わないで!」
が、理沙子は気付いてしまった。小鳥遊の瞳の奥に隠した悲しみを。
「…この人も、私と同じ…。」
小鳥遊の孤独に共感した理沙子は、もはや彼女を憎むことなどできなかった…。
いまだ忘れることのできない上原今日子。自分を慕い支えてくれる吉原泉。敵対しながらも同じ傷を共有するガルム小鳥遊。愛憎まみれる荒波に、理沙子は翻弄されるばかりである。
(つづく)